私的なことながら、手を怪我してしまった。
盛大にすっ転び、ギザギザのアスファルトに思い切り手をこすりつけてしまった。
おかげで手の平の膨らんだ部分(掌底で当てる所)の皮がズル剥けてしまったのだ。
けっこう広範囲だったが、医者には行かなかった。
もちろん化膿してきたら行くつもりであったが、少しやってみたいことがあったのだ。

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●湿潤治療


湿潤治療というのをご存じだろうか。
今までは、傷口は乾かした方が良いとされてきた。
しかし、今では湿潤治療、つまり傷口は乾かさない方が良いとされている。
なぜか。

擦りむいたりしたとき、血が止まると今度は傷口から透明な液が染み出してくる。
滲出液と呼ばれ、様々な種類のサイトカイン(免疫システムの細胞から分泌されるタンパク質)、細胞成長因子が含まれていて、傷の治療段階に合わせて血小板や線維芽細胞、表皮細胞などが順序よく増殖できるようコントロールする役割を果たしている。
また、白血球やマクロファージなどの免疫細胞も含まれており感染を予防する。
つまり、感染予防と皮膚の再生を一度に行う為に出しているものなのだ。
これを乾かしてしまうなんてなんともったいない。

私の行ったことは以下のことのみだ。


始め傷口を流水でよく洗う(異物は可能な限り除去する。痛いけど)。
マキロン等で消毒(消毒は最初の一回のみ)
傷口を防水性のガーゼ付きテープ(大きな絆創膏のようなもの)で覆う(下のようなもの)。


日に一回位絆創膏を取り替える。取り替える際に傷口の水洗いをする(軽く洗い流す程度)

それだけで、傷を負ってから約2週間。
8割方は直った。
ちなみに消毒を最初の一回に留めたのは、消毒液が細胞の再生を阻害するからだ。
今はそういった害の少ないものも出ているようだが、それなら消毒対象だって大して殺せまい。
しかも一回殺したところで、30分もすればまた沸いてくるのだそうだ。
あまり意味が無い。
それなら自分の体から出てくるものを有効活用した方がよほど良い。



●医学って何なの?


驚くのは、この湿潤治療が出てきたのはけっこう最近だということだ。
傷を負った際に人体が何の為に滲出液を出しているのか、ちょっと考えれば分かりそうなものではないか。
にもかかわらず、なぜそれまで(ごく最近まで)傷は乾かした方が良いなんてことになっていたのか。
傷は治ってくると乾くからという理由を聞いたことがある、それにしてもお粗末だ。
実際のことよりも権威(誰が最初に提唱したか知らないけど)や迷信の方が優先されていたということだ。

たかだか擦り傷ごときでずっと間違った方法が採られていたことにも驚きだが、何も考えずにその方法を踏襲してきた私たちにも問題があるのではないだろうか。
たかが擦り傷、されど擦り傷。

よく考えもせずに擦り傷とバカにしてきた功罪は大きい。
こっちの傷は死にも至りますよ、きっと。



ちなみに、人体の直す行為と真逆を行く商品がある。
キズドライだ。


白いパウダーが傷を乾かし、イソプロピルメチルフェノールが消毒を行う。
滲出液の働きを最も効率良く阻害することで、感染を促し皮膚の再生を邪魔する(笑)
よくもまあこんな悪魔のような商品を考えついたものだと思うが、これを使ったことで傷が重篤化した例が多数報告されている。
わざわざ傷を治さないようにしているのだから当然だ。

もちろんお医者に行かないことを推奨しているわけではありません。
痛い思いをするのが自分だから人体実験をしたわけで、他の人であれば通院を勧めるでしょう。
でもまあ、どうせやってくれるとしても、異物の除去と消毒と包帯、いらないのに痛み止めや化膿止めを出してくれるかもしれません。

こうやって、たかが擦り傷がいろんなことを考えさせてくれる訳であります(笑)




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