正しいが故に失敗するとは何とも皮肉な話ではないか。
と同時に、アウトサイダーを気取る私も、けっこう王道を行っていたのだなと、嬉しい半面自分を見直すきっかけとなった。


●なぜ、正しいと失敗するのか



本著は、一時期はその市場を独占状態にあった企業が、新しい技術によって失敗する過程を見ることでその原因を探る。
原因を探る上で見えて来るのは、経営者が無能だったのではなく、非常に有能で正しくあったからという皮肉なものだった。
どういうことか。


本著は、技術革新を、持続的イノベーションと破壊的イノベーションに分け、例えばHDD(パソコンのハードディスク)の外寸が小さくなっていった事や、ホンダのバイクのアメリカ進出などで実際に起きた事例を用いて説明する。
製品の開発や設備投資にあたっては、顧客の要求に忠実に耳を傾け、マーケットを決める。
需要が無いと分かれば投資はしない。
売れないものに投資するバカはいない。


持続的なイノベーション(製品のブラッシュアップによる性能向上)ではそれで正しい。
大企業はそれが得意であるとする。


しかし、破壊的イノベーションの場合、そもそも市場そのものが存在しない、もしくは存在しても大企業には旨味がないほど小さい場合がほとんどだと言う。
破壊的イノベーションはほとんどの場合において、現在市場に出回っているものよりも性能が悪いことがほとんどだからだ。
例えば、HDDの外寸が小さくなっても容量が少ないというような感じだ。
主流となっている市場の顧客の多くはそれを求めない(市場が無い)。
しかし、破壊的イノベーションが主流となっている市場の性能に追いついてくるまで温めておくことで多くの優良企業が失敗してしまう。
後追いで市場を取れることはほとんど無い。


●電気自動車に見るイノベーション

正直自分は電気自動車は売れないと思っていた。
未だに一回の充電で走行できる距離が短く(日産リーフを例に取るとJC08モードで200kmとなっている)、充電スポットも増えては来ているがまだ少ない。
どう見てもガソリン車に比べて見劣りする。
しかも補助金を入れてもけっこう高い。
破壊的イノベーションは、主流となっている市場(ガソリン車)に比べて性能が劣っている例に合致している。


しかし、電気自動車がガソリン車に追いついてくるまで手をこまねいていては失敗する。
その道の先駆者となりたいのであれば違う市場を探すべきなのだ。
本では、加速が遅い、航続距離が短いことを逆手に取って免許取りたての若者専用車を挙げている。


日本では、家の近場だけを行き来するシニア層向け。
または過疎地域でガソリンスタンドが無くなってしまった地域向け(自宅で充電すれば良い為)。
これらは実際試みられているが、一人乗りのシティコミューターや、家の電源として利用したりもできる。


これからイノベーションを仕掛けようと思う方。
破壊的イノベーションの匂いをいち早く察知して対応しようと考えている方には読んでおいて損はないと思える本である。



コダックはデジカメに乗り遅れて失敗した。
日本の電気メーカーは過去最大の赤字に陥っている。
破壊的イノベーションの餌食にかかろうとしているのだろうか・・・。

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